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リミット/感想&あらすじ・少女漫画というより、サスペンス傾向にあると言えよう…ネタバレ注意。

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――少女漫画にして、女児向けにあらず。極限状態を乗り越えて、彼女は一つの答えを得る。

全6巻。壮絶ないじめの描写で話題となった『ライフ』を代表作に持つ、すえのぶけいこの中編作品。

ライフに比して、いじめの要素は控えめ……などと評されているが、大嘘。

相変わらずの真に迫った心理描写で、登場人物のみならず、読者のテンションまでどん底に叩き落としてくれる。

主人公・今野水希(こんのみずき)は、人生という水の中をそつなく泳ぐ女子高生。

中学時代の事件によって、要領の良い生き方を是としている。そんな彼女が、交通事故とそれに伴うサバイバル生活によって従来の価値観を否定され、平穏という長所を失い、“本当に”大切な想いにたどりつく物語。

ジャンルは少女漫画というより、サスペンス傾向にあると言えよう。
何せ、当たり前に出てくるはずの恋愛対象――男性キャラが、折り返しとなる3巻までは登場せず、少女たちの血で血を洗う殺伐展開が延々と続く。

疑念、憎悪、後悔。知りたくなかった、友の本心。
すえのぶ氏の真骨頂とでも言うべき、惨憺たる真相。
内容の9割は、ネガティブな空気に満ちあふれている。

だというのに、不思議と読後感は爽やかで、穏やかに凪いだ水面のようだった。

思うに、『リミット』の核は、表面とは180度違った色で出来ているのだ。

強烈な欺瞞に包まれた信頼。性善説に隠された性善説。否定に秘められた肯定。

だからこそ、私も含めた読者は今作を好きになれるし、痛く苦しいシーンまでもを再び読まんとページを繰るのではないだろうか。

最後に。主人公の名前「水希」の意味は、ラストシーンで明かされる。
その瞬間のカタルシスは、長く息を止めた後、初めて味わう酸素の感動に等しい。

男女の別なく、膾炙(かいしゃ)されてほしい名作。