- タイトル=『絶園(ぜつえん)のテンペスト』
- 作者=城平京(原作)、左有秀(構成)、彩崎廉(作画)
自宅で謎の死を遂げた少女、不破愛花(ふわ あいか)。その死の真相を巡る旅が、やがて世界の命運を左右していく。
不破愛花の彼氏だった滝川吉野(たきがわ よしの)は、黒鉄(くろがね)病という、全身が金属化する呪的現象に直面する。少女の兄、不破真広(ふわ まひろ)は復讐を誓うが、孤島に流された魔法使いの姫君、鎖部葉風(くさりべ はかぜ)と知り合い、水面下で蠢く魔法の陰謀を知るのだった。
現代ファンタジーと推理モノを上手く絡ませ、心理戦が繰り広げられる展開は、まさに圧巻の一言です。
おすすめのキャラクターは、主人公の滝川吉野と、その幼なじみである不破真広の二人。
滝川吉野は、とにかく温和な性格で、感情を高ぶらせることは少ないですが、一度決めたことは冷徹なまでにやり通す、策士タイプの少年です。対して、不破真広は見た目も言動も粗暴の一言。妹を殺した犯人を殺すための旅路で、そのついでに世界を救う、と豪語するような王族気質です。
一見、相性は悪いようにも思えますが、二人は互いを補い、常に助け合いながら進んで行きます。
ストーリーにおいてはやはり、不破愛花を殺害したのが誰なのか、というポイントが大きいと思われます。ファンタジー要素と心理的なトリック、そして数々の伏線が、やがて一つの真相に繋がった瞬間は、何とも言えない爽快感がありました。
また、この作品の独特な点として、シェイクスピアの『ハムレット』と『テンペスト』の文章が、随所で引用されています。中でも印象的なのが『この世の関節は外れてしまった。ああ、何と呪われた因果か。それを直すために、生まれついたとは……!』という文。キーワードである復讐と魔法の絡み合う様を、的確に表す引用文です。
このように、様々な要素が盛り込まれ、一大サーガとして成立したのが、『絶園のテンペスト』という作品なのです。