「乙嫁語り」10巻 森薫・著 カルルク男修行編とスミスとアリの二人旅編
冒頭から、冬の中央アジアの岩山にすっくとたたずむ山ヒツジの姿に見入ってしまいました。この作品は、本当にマンガの領域を超えた美しさがありますね。上質なドキュメンタリー番組を見ているような、そんな錯覚に陥ります。
さて、アミルに釣り合う男らしさを身につけたいカルルクは、アミルの兄アゼルの元で弓を習う修行を自ら申し出ます。周囲が決めた相手と顔も知らないまま結婚するのが普通だったこの時代、幸せな生活を手に入れるためには、結婚後にお互いを思いやり歩みよる努力が不可欠だったのでしょうね。その点、カルルクとアミルは一見デコボコカップルのように見えますが、実はけっこう恵まれているのではないかなぁ、などということを考えたりしました。イヌワシを手なずけようと奮闘するカルルクは、とても素敵でした。
そして、旅を続けるスミスがタラスと再会した展開には、すごくびっくりしました。この二人の今後も気になるところです。タラスの結婚相手の深い優しさにもホロリとさせられ、他人を思いやることの大切さを改めて感じました。