どこか冷めた不思議なグルメ漫画:『孤独のグルメ』(久住昌之)
松重豊主演でドラマ化までされた『孤独のグルメ』の原作がこちら。グルメ漫画は「美味しいものが出てきてそれを主人公が食べる」のが基本的な展開で、食べることがメインに取り上げられます。
しかし『孤独のグルメ』では食べることよりも食べ物を取り巻く状況がメインで、知らないお店に入る時の逡巡や注文時の迷い、料理人や店の雰囲気などが描かれます。食べることをメインにしないグルメ漫画は『孤独のグルメ』くらいではないでしょうか?主人公はちょっとひねくれた考え方をする中年男性ですが、言っていることに思わず共感してしまう部分が少なくありません。一話一話のセリフにどことなく余韻が漂うというか、ひねくれ者なのに憎めないというか、そんな不思議な主人公なのです。『孤独のグルメ』を読んでいると、なぜかこの主人公に惹かれてしまうのです。ドラマと原作では、おそらく内容が大きく異なると思いますが、原作は大人が読むと色々と思うところがある漫画に仕上がっています。ネット上で一部のコマだけが切り取られてギャグ漫画的な扱いを受けていますが、決してそのような漫画ではありません。今では見られなくなりつつある、大人な漫画が『孤独のグルメ』なのです。