- 井上雅彦
一言感想
道は繋がってゆく。
面白いところ。
何もかもがうまくいかない日々を送る主人公の野宮朋美は、奮起してバスケットボールのプロを目指すべく〝トライアウト(採用試験)〟を受ける。紅白に別れ試合形式での〝スクリメージ〟と呼ばれる審査で、野宮は高校時代にイメージしていた自分自身のバスケットを見出す。
自己中心的なプレイヤーの動かし方、誰がどんな特技を持って動いているのか、冷静な分析と判断が必要とされるPGのポジションを貫徹するなかで、「このコートから出たくねえ」と快感すら覚える。
野宮は高校時代、モチベーションの違いから部活では煙たがられ、思うようなプレイができなかった。
立ち止まらず挑戦していると、結果はどうであれ、必ず自分自身に気付きと経験をもたらしてくれる。それを顕著に教えてくれる。
好きなエピソード。
交通事故で下半身不随となり車椅子生活となった高橋久信が、競技用(バスケット用)の車椅子に、自発的に乗ったエピソード。
リハビリに積極的ではなかった久信が、事故前の健常時でもさして積極的ではなかったバスケットに活路を見出そうとする姿は、宿命すら感じる。
おすすめ。
野宮のところどころで感極まるシーン。
「やってきてよかった」(P61)
「そんなPGになるんだ」(P106)
「ああ、このコートから出たくねえ」(P136)
「絶望――/これは違う/これは幸せってもんだ」(P205~P211)